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脂肪の役割

◇脂質が持っている様々な役割
ダイエットをする時に脂質を減らす方も少なくないと思います。でも、エネルギー計算だけで脂質を減らす前に、脂質が身体にとって必要なものであることを思い出してもらいたいと思います。
 
脂質は生体中に存在する水に溶けない(溶けにくい)有機化合物です。脂質については、一般の消費者では、太るものというような認識しかしていない方も多いようですが、炭水化物、たんぱく質などと並んで生命にとっては不可欠な成分ですが、その構造や生物学的な役割がとても多様であることが特徴のひとつです。
 
・生体膜の成分として
・エネルギーを貯蔵する目的として
・動物の体温を保つ断熱材として
・皮膚を保護するものとして
・脂溶性ビタミンとして
・代謝活性をコントロールするホルモンとして
・血圧、体温、筋肉のはたらきをコントロールするものとして
 
この他にも、体内で様々な重要な働きをしています。
 
従って、食事制限をする際でも、上手に補給していく必要があります。エネルギー計算などだけで摂取する脂質量を単純に減らしてしまうと、その他の大切な機能まで低下させてしまうことになります。
 
◇脂質の分類
構造上、以下のように分類することができます。脂質って、こんなに色々あるの、ビタミンEも脂質なの?と意外な方も少なくないのではないでしょうか?
    
脂肪酸・・・代表的な構造、いろいろなことに関与します。
トリアシルグリセロール・・・貯蔵される形です。
グリセロリン脂質・・・生体膜を形成します。
スフィンゴ脂質・・・少し複雑なので説明は省略します(^^)。
ステロイド・・・コレステロール、ステロイドホルモンなど。説明は不要ですね。
    
生物にとって重要なその他の脂質
   ろう・・・植物の葉、果実、動物の皮膚、毛皮、羽毛、外骨格で水をはじく保護膜
   エイコサノイド・・・プロスタグランジンなどの局所ホルモン
   イソプレノイド・・・ビタミンA、D、E、K、コエンザイムQ10
   テルペン・・・リモネン(レモンの香りのもとになる環状の脂質)
 
◇脂肪酸の分類
以下に脂肪酸の分類を示します。用語は、一部を除き、「五訂食品成分表2001」(女子栄養大学出版部)での表現に合わせました。
 
飽和脂肪酸(saturated fatty acids)
炭化水素鎖のすべての炭素が水素で飽和されているもので、代表的なものには、以下のようなものがあります。C16:0というのは構造の特徴を示すもので、炭素の数が16個、2重結合の数が0個という意味です。飽和脂肪酸には2重結合がありません。
 
主な飽和脂肪酸
パルミチン酸 C16:0・・・動植物油
ステアリン酸 C18:0・・・動植物油
 
不飽和脂肪酸(unsaturated fatty acids)
炭化水素鎖の一部に二重結合があるものを不飽和脂肪酸といいます。また、二重結合の数と場所により、その生物的な役割が大きく変わってきます。
 
一不飽和脂肪酸(monounsaturated fatty acids)・・・二重結合がひとつ
多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids)・・・二重結合がふたつ以上
   メチル末端から数えていくつめに最初の二重結合があるかにより、n-3系、n-6系、などに分類されます。
 
必須脂肪酸
上記のふたつは構造による分類ですが、n-3系、n-6系のように、体内で合成されない(にくい)ものを、必須脂肪酸と呼びます。
 
n-3系:
  α-リノレン酸 C18:3・・・シソ油が有名です。
  EPA(エイコサペンタエン酸) C20:5・・・魚油に多く含まれます。
  DHA(ドコサヘキサエン酸) C22:6・・・魚油に多く含まれます。
 
n-6系:
  リノール酸 C18:2・・・植物油に多く含まれます。
  アラキドン酸 C20:4
 
◇主な食品の脂肪酸組成
脂肪酸は、以上のように分類されますが、ひとつの食品には、以下の表のように、これらのうちのいくつかが含まれています。いずれも、食品可食部100g中に含まれる量で、「五訂食品成分表2001」(女子栄養大学出版部)をもとに作成しました。

食品 パルミチン酸
飽和
オレイン酸
n=9
リノール酸
n=6
α-リノレン酸
n=3
EPA
n=3
DHA
n=3

オリーブ油 9.3g 70.5g - 0.8g - -
なたね油 - 55.2g 20.5g 10.2g - -
ひまわり油 - 17.9g 65.8g 0.7g - -
大豆油 9.7g - 49.9g 7.5g - -
とうもろこし油 10.5g 32.5g 47.3g 1.4g - -
ごま油 8.4g 36.6g 42.0g 0.6g - -
牛脂 24.3g 40.9g - - - -
豚脂 25.3g 40.5g - 0.7g - -
ほんまぐろ脂身 - - - - 1.3g 2.9g
養殖はまち - - - - 1.5g 1.7g
うなぎ蒲焼 - - - - 0.9g 1.5g
まだい養殖 - - - - 1.1g 1.8g
まいわし - - - - 1.4g 1.1g
さば - - - - 1.2g 1.8g
ぶり - - - - 0.9g 1.8g
さんま - - - - 0.8g 1.4g
さけ - - - - 0.5g 0.8g

 
注:表中の"-"は、含まれていないという意味ではなく、もとの本にデータがなかったことを示します。
また、本表の成分と、実際に入手可能な食品とは、異なる場合が少なくありません。目安として参考にしてください。
 
◇食事の組み立て方
このような脂肪酸ですが、動物性の脂肪酸はコレステロールを増加させるので悪者で、リノール酸は健康に良いものと認識している消費者も少なくありませんが、脂肪酸の摂取方法で大切なことはバランスです。コレステロールは、食品から摂取される量は、体内で合成される量の一部に過ぎません。また、ホルモンなどの材料となる貴重な栄養素です。一方、身体に良いと思っている方の多いリノール酸も、摂りすぎることにより、一部の病気と関連しているともいわれています。
 
それでは、どのように食事を組み立てていったら良いのでしょうか?
 
栄養所要量(第6次改定)では、飽和:一不飽和(n=9):多価不飽和(n=6 + n=3)=3:4:3が望ましいとしています。また、n=6とn=3の比は、4:1程度が適性であろうとしています。これらをまとめると、以下のような感じになるかな、と思います。

  パルミチン酸
飽和
オレイン酸
n=9
リノール酸
n=6
α-リノレン酸 EPA DHA
n=3 n=3 n=3

摂取量の目安 15g 15g 12g 3g

 
でも、こんな数字を見せられても食事は組み立てられない!というのが本音だと思いますので、以下にポイントを紹介します。
 
低糖質ダイエットをしている方:
体脂肪の分解が盛んになってきたら、摂取する脂質の量を全体的に少し減らすとともに、肉の比率を少し減らし、魚の比率を少し上げてみると良いと思います。
 
一般的な食事をしている方:
魚を積極的に食事に取り入れると良いと思います。また、衣の厚い揚げ物は減らした方がよいでしょう。


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